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永田 敦美(Atsumi Nagata)
Career Mentor|キャリア設計・進路相談

進路相談を受けているなかで、最もよく耳にする悩みのひとつが「やりたいことが見つからない」という言葉です。高校生や浪人生、通信制高校の生徒さんから「何になりたいかわからない」「夢がない自分はダメなのか」という声を聞くたびに、私はこうお伝えしています。「やりたいことがないのは、あなたが特別なわけじゃない。多くの人がそこからスタートしています」と。

「やりたいことがない」は普通のこと

日本の教育システムでは、15〜18歳という非常に若い段階で進路を決定しなければならない場面が多くあります。しかし実際には、20代・30代になってからキャリアの方向を大きく変える人も珍しくありません。「今すぐ答えを出さなければ」という焦りが、逆に思考を硬直させてしまうことがあるのです。

進路設計において大切なのは、「完璧な答え」を見つけることではなく、「今の自分にとって納得感のある方向」を見つけることです。「やりたいことがない状態」は出発点であって、ゴールではありません。むしろ、白紙の状態だからこそ、自分に合ったキャリアを柔軟に設計できるともいえます。

キャリア軸を見つける3つの問いかけ

やりたいことが見えていない状態でも、キャリアを考える手がかりは必ずあります。私が進路相談でよく使う3つの問いかけを紹介します。

①「時間を忘れて取り組んだことは何ですか?」
好きなゲーム、料理、SNSへの投稿、読書、スポーツ観戦——どんなことでも構いません。熱中できた経験の中には、あなたの価値観のヒントが隠れています。

②「どんな場面で『これは嫌だ』と感じましたか?」
ネガティブな感情こそ、自分の大切にしていることを映し出す鏡です。詳しくは次のセクションで解説します。

③「10年後、どんな生活を送っていたいですか?」
職業ではなく「生活スタイル」から逆算する方法です。「一か所にとどまらず自由に動きたい」「チームで何かを作りたい」など、働き方のイメージが浮かんだら、それを大切にしてください。

この3つの問いに答えるだけで、多くの生徒さんが「少し方向性が見えてきた」という感覚を持てるようになります。具体的な職業名でなくても、「こういう環境で働きたい」という感覚が一つあれば、それが進路設計の出発点になります。

「やりたいこと」より先に「嫌なこと」を整理する

進路相談でよくある落とし穴は、「やりたいこと探し」にばかり集中してしまうことです。実は、「絶対に避けたいこと」「これだけは無理だと思うこと」を先に明確にする方が、進路の輪郭がぐっと見えやすくなります。

たとえば、「毎日同じ作業の繰り返しは耐えられない」という人は、ルーティン業務が少なく変化が多い職場を選ぶべきです。「人と話すことが極端に苦痛」という人は、接客や営業中心の仕事より、個人作業が多い分野を検討する価値があります。「成果を数字で評価されることへの強いストレスがある」という人は、数値ノルマが厳しい職場を最初から外すことができます。

「嫌なこと」リストはネガティブな思考ではありません。これは自分の価値観と境界線を知るための、とても合理的な自己分析の手法です。「この仕事は向いていない」という気づきが積み重なるほど、残った選択肢の中に「案外これなら続けられそう」という仕事が見えてくるものです。

進路は「決める」ものではなく「育てる」もの

最後に、一番大切なことをお伝えします。進路は「今この瞬間に完全に決め切るもの」ではありません。人生のどの段階でも、環境が変わり、自分が変わり、キャリアの方向は変わっていきます。

大切なのは、「今の自分にとって、一番成長できる環境はどこか」という問いを持ち続けることです。高卒認定を目指している方も、通信制高校に在籍している方も、浪人中の方も——それぞれの現在地から、自分なりの軸を少しずつ育てていけば十分です。

CLCでは、こうした進路相談を個別に行っています。「話してみたら少し楽になった」「自分でも気づかなかった方向性が見えた」という声をたくさんいただいています。一人で抱え込まずに、まずは気軽に話しかけてみてください。あなたのペースで、一緒に考えていきましょう。