結論:未成年でも起業はできる。ただし「前提」がある
「中学生や高校生でも起業できますか?」——行政書士として、そしてCLC(Core Learning Community)のCareer Mentorとして、10代の相談を受けるなかで最も多く聞かれる質問のひとつです。結論から言えば、未成年でも事業を始めること自体は可能です。物販、デザイン、動画編集、プログラミング、イベント運営といった領域で、中学生・高校生が仕事として活動を始めるケースは珍しくなくなりました。
ただし、大人が起業する場合とまったく同じというわけではありません。2022年4月の民法改正で成年年齢は18歳に引き下げられましたが、それでも18歳未満は法律上「未成年者」として扱われます。契約や口座開設、税金の手続きなど、いくつかの場面で大人とは異なる取り扱いになり、知らないまま走り出すとあとからつまずきがちです。
逆に言えば、押さえるべき前提を先に知っておけば、10代のうちから安心して挑戦できるということです。この記事では、法律とお金の観点から、中学生・高校生が事業を始める前に知っておきたい基本を整理します。実践面のステップについては高校生 起業の始め方——10代の小さなビジネス3ステップもあわせて読んでみてください。
なお、制度や実務の取り扱いは改正されることがあります。手続きを進めるときは最新の公的情報を確認するか、専門家に相談してください。
親の同意が必要になる場面と、その理由
未成年が事業を始めるときに、最初に理解しておきたいのが「親(法定代理人)の同意」の位置づけです。民法では、未成年者が法定代理人の同意を得ずに行った契約は、原則としてあとから取り消せるとされています。これは未成年者を守るための仕組みですが、事業をする側から見ると「取引相手が不安に感じる要素」にもなります。
「営業の許可」という考え方
あまり知られていませんが、民法には法定代理人から「営業の許可」を受けた未成年者は、その営業に関しては成年者と同一の行為能力を持つという趣旨の規定があります。つまり、親が「この事業をやっていい」と認めた範囲なら、その事業に関する契約は一つひとつ同意を取らなくても進められる、という整理です。取引先から見ても安心材料になります。
実務上は、口約束ではなく書面で範囲を明確にしておくことをおすすめしています。「何の事業を」「どの範囲まで」認めるのかを家族で言語化するプロセス自体が、最初の事業計画づくりになります。私の相談経験でも、ここを丁寧にやった家庭ほどその後のトラブルが少ない傾向があります。
法人をつくる場合の注意点
株式会社や合同会社を設立する場合、未成年でも発起人・役員になれるケースはありますが、印鑑登録や証明書の取得、親権者の同意書の添付など追加の手続きが求められることがあり、必要書類も運用によって異なる場合があります。事前確認が欠かせません。会社形態そのものの選び方については起業前に知っておきたい法律の基礎知識──行政書士が教える若者向け法務入門で詳しく解説しています。
親の同意は「面倒な壁」ではなく事業を守る土台です。反対の理由の多くは「危ないことをしてほしくない」という心配から来ています。何をやりたいのか、リスクをどう管理するのかを説明できれば、対話は前に進みやすくなります。
お金まわりで10代がつまずきやすい3つのこと
法律と並んで相談が多いのが、お金の扱いです。ここでは特につまずきやすい3点を挙げます。
① 開業届と確定申告
個人で継続的に収入を得るようになった場合、開業届の提出や、所得に応じた確定申告が必要になることがあります。これらの手続きに年齢の下限はありません。「未成年だから申告しなくていい」ということはなく、一定額を超える所得があれば大人と同じように申告義務が生じるのが原則です。売上と経費が分かる記録を、最初の1件目から残す習慣をつけておくと後が楽になります。
② 親の扶養・世帯への影響
子どもの所得が一定額を超えると、保護者の扶養控除の対象から外れるなど、世帯の税負担に影響が出るケースもあります。金額の基準は制度改正で変わることがあるため、具体的な数字は国税庁の最新情報を確認するか、税務署・税理士に相談するのが安全です。家計に関わる話なので、収入が伸び始めた段階で一度家族と共有しておくとよいでしょう。
③ 口座・決済サービスの年齢制限
銀行口座、ネット決済、各種プラットフォームの出品者登録などは、利用規約で年齢制限や親権者の同意を求めている場合があります。サービスごとに条件が異なるので、事業を始める前に使う予定のサービスの規約を確認しておきましょう。フリーランス的な働き方で必要になる社会保険や税金の全体像は、フリーランス独立前に知っておくべき社会保険と税金の基礎も参考になります。
学校との両立をどう考えるか——時間をつくるという選択
法律とお金の準備が整っても、多くの10代が最後に直面するのが「時間が足りない」という現実的な壁です。全日制高校に通いながら事業を動かそうとすると、使えるのは平日の夕方以降と週末だけ。学校によっては校則で営業活動やアルバイトに制限を設けている場合もあります。
ここで選択肢として挙がるのが、高卒認定(高等学校卒業程度認定試験)です。文部科学省が実施する国の試験で、合格すれば高校に通わなくても大学・短大・専門学校の受験資格が得られます。16歳から受験できるため、早い段階で進学資格を確保し、残りの時間を事業や探究に振り向ける設計が可能です。
通信制高校も時間の自由度は高いのですが、レポートやスクーリングなど学校としての枠組みは残ります。通信制高校では実現しにくい水準の時間の自由を求めるなら、高卒認定は有力な候補です。実際に高卒認定を選んで事業を立ち上げた10代のリアルは、高卒認定から起業した10代のリアル|熱狂を仕事にする進路にまとめています。
もちろん、全日制に通いながら小さく始めるのも立派な選択です。重要なのは「学校に行かない選択」も含めて時間の使い方を自分で設計できると知っておくこと。選択肢を知らずに我慢するのと、知ったうえで今の道を選ぶのとでは、納得度がまったく違います。
10代で始めるときに、伴走者がいると変わること
ここまで法律・お金・時間の3つを見てきました。どれも独学で調べられないものではありませんが、10代が一人で全部を抱えると、本来やりたかった事業に使える時間が削られてしまいます。私が相談を受けて感じるのは、つまずきの多くは能力ではなく「誰に聞けばいいか分からない」という情報の問題だということです。
CLCでは、行政書士や現役の起業家、ビジネスパーソン、学習メンターが、一人ひとりの状況に合わせてオーダーメイドで進路と学習を設計し、伴走しています。事業に挑戦したい人には起業コースで実践の場と大人のネットワークを、大学進学も視野に入れたい人には進学コースで学習の伴走を用意しています。地域の経営者コミュニティとつながるメンターも参加しており、10代が「本物の現場」に触れられる環境を大切にしています。
最後にお伝えしたいのは、年齢は挑戦しない理由にはならないということです。未成年は制約でもありますが、失敗のコストが最も小さい時期でもあります。ルールを正しく知り、家族と対話し、必要なときに専門家を頼る——その3つができれば、10代の起業は決して無謀な選択ではありません。
「自分の場合はどう進めればいい?」と迷ったら、一度話を聞かせてください。LINEの無料相談では、やりたいことや不安な点を気軽に相談できます。お問い合わせフォームやよくある質問もあわせてご覧ください。