受かった科目は消えない——科目合格制という設計
私は難関大志望の受験生を中心に、限られた時間をどこに配分するかという学習戦略を組む仕事をしています。8月の高卒認定試験が終わったこの時期、毎年ほぼ同じ相談が届きます。「手応えのなかった科目があって、もう今年は間に合わない気がする」というものです。
まず、前提になる事実を一つ。高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)は科目合格制です。全科目を一度に取り切る必要はありません。合格した科目は次回以降の受験で免除されます。今回8科目受けて5科目に受かっていたなら、その5科目は確定。次に向き合うのは残りの3科目だけです。ゼロに巻き戻る試験ではない、ということをまず押さえてください。
そしてもう一つ。この試験は年に2回実施されます。例年、第1回が8月上旬、第2回が11月上旬です。8月で残した科目は、11月に受け直せる。その間はおよそ3か月あります。
私は大学受験の指導で「3か月あれば何が変えられるか」を毎年見ています。一般入試の直前期に3か月あれば、状況は十分に動きます。ましてや対象が3科目、しかも高卒認定は教科書レベルの基礎が中心の試験です。条件としては、むしろ恵まれている部類だと言っていい。
なお受験料は受験する科目数によって区分が変わる仕組みで、科目数が減れば負担も軽くなります。制度面や費用の詳細は高卒認定の費用と制度Q&A|保護者向け完全ガイドにまとめてありますが、金額や区分は年度で改定されることがあるため、最終的には文部科学省の公式発表を確認してください。
結果通知を待つ期間に、いちばん差がつく
第1回の結果通知が届くのは例年9月上旬ごろです。つまり試験直後のいまは、「たぶん落ちた」しかわからない宙ぶらりんの期間にあたります。私の指導経験では、この数週間で手が完全に止まってしまう人がとても多い。そして11月に間に合わなくなる原因は、たいていここにあります。
この期間にやるべきことは、はっきり3つです。
① 自己採点を、科目ごとに数字で出す
問題冊子は持ち帰れますし、解答は例年、試験後に文部科学省のサイトで公表されます。記憶が新しいうちに、科目ごとに正答数を出してください。高卒認定の合格ラインは100点満点で40点前後とされることが多い試験ですが、年度・科目によって変動しうるので、あくまで目安として扱います。
大事なのは「38点で落ちた」のか「12点で落ちた」のかを知ることです。この2つは、次の3か月の作り方がまったく違います。前者は詰めの精度の問題、後者は土台そのものの問題。数字がないまま「なんとなくダメだった」で走り出すと、必要のない範囲に時間を溶かします。
② 第2回の出願準備を、結果を待たずに始める
これが実務的にいちばん効きます。第2回の出願期間は例年9月に設定され、第1回の結果通知と時期が近接します。願書の取り寄せ、証明写真、住民票や単位修得証明書といった必要書類は、結果が届いてから動き出すと間に合わないことがある。
「受かっていたら出さなければいいだけ」なので、先に準備しておくほうがリスクは明らかに小さい。ただし出願日程・必要書類・提出方法は毎年変わりうるので、必ず文部科学省の公式ページで最新の受験案内を確認してください。ここだけは人づての情報で判断しないでほしいところです。
③ 落ちた科目の「落ち方」を分類する
自己採点の数字が出たら、次は原因の切り分けです。ここが今回いちばん伝えたい部分なので、章を分けます。
「なぜ取れなかったか」を3種類に分ける
学習戦略を立てるとき、私が最初にやるのは「点が取れなかった理由」を3つに分類することです。同じ30点でも、原因が違えば処方箋がまったく変わるからです。ここを飛ばして「とりあえず参考書を1周する」に走ると、効くはずの3か月が効かなくなります。
A. そもそも範囲に触れていない(学習空白型)
不登校の期間や中退のタイミングで、その単元を習っていない。数学の後半範囲や、理科の計算分野で起きやすいパターンです。答案を見れば一目でわかります——手をつけた形跡そのものがない。
対処はシンプルで、埋めるしかありません。ただし高卒認定で問われるのは教科書レベルの基礎が中心なので、埋めるべき量は大学受験のそれとは比較になりません。数学に苦手意識がある場合の入り方は数学アレルギーから抜け出す「学び直し」3ステップで具体的に書いています。学習空白そのものへの向き合い方は不登校で勉強が遅れても大丈夫|取り戻し方と進路を参照してください。
B. 触れてはいるが定着していない(演習不足型)
テキストは読んだ、講義動画も見た、でも本番で手が動かなかった。過去問の周回数が足りていない典型です。高卒認定は出題形式と頻出テーマの傾向がはっきりしている試験なので、ここに該当する人は投下した時間が素直に点数に変わります。3か月で最も伸びしろが大きいタイプです。
C. 時間切れ・形式に負けた(本番運用型)
解けるはずの問題を解き残している。国語の現代文や英語の長文で起きやすい。これは学力ではなく運用の問題です。時間を計った通し演習を数週間繰り返すだけで変わることが多く、新しい教材を買う必要はありません。文系科目の時間配分は文系科目の攻略法——高卒認定の国語・社会・英語を効率的に学ぶ、理科の詰め方は高卒認定の理科は「暗記」より「理解」が近道にまとめてあります。
自己採点した答案を前に、A・B・Cがそれぞれ何割かを出してみてください。ここまでやって初めて、3か月の計画が意味を持ちます。ちなみに私が見てきた範囲では、BとCで大半が説明できるケースが少なくありません。つまり、思っているより深刻でないことのほうが多い。
11月までの10週間、こう組む
8月中旬から11月上旬までは、おおよそ10〜11週間です。私はこれを3つのブロックに割って設計します。
第1ブロック(〜3週目):Aの穴埋めだけをやる
触れていない単元を、教科書か高卒認定向けの薄い1冊で埋めます。ここで分厚い参考書に手を出さないこと。この試験に大学受験用の網羅系教材は過剰で、終わらないまま11月が来ます。「1冊を最後まで」が原則です。
第2ブロック(4〜7週目):過去問に全振りする
科目ごとに最低3年分、できれば5年分。1周目は時間を計らずに、間違えた問題の解説を読み切ることを優先します。2周目は本番と同じ時間設定で解く。BとCの改善は、ほぼこのブロックで起きます。
第3ブロック(8〜10週目):間違いだけを潰す
この時期に新しい教材へ手を伸ばすのは、ほぼ必ず失敗します。やることは2つだけ——過去問で間違えた問題の再演習と、本番と同じ時間割での通し演習です。試験は2日間にわたって複数科目を受けるので、その日の体力配分に慣れておくこと自体が得点になります。
1日あたりの目安ですが、残り3科目なら1日2〜3時間で十分に射程内です。全日制に通いながら受験勉強をする子は、部活と授業のあとの限られた時間でこれをやっています。もし学校に行っていない時間があるなら、その時間はハンディではなくむしろ武器です。同じ10週間の密度が違う。
そして11月の第2回に合格できれば、その年度の大学受験に向けた出願にも間に合う設計が可能です。大学によっては高卒認定の「合格見込」の扱いを定めている場合もありますが、条件は大学ごとに異なるため、志望校の募集要項を必ず個別に確認してください。高卒認定を取ったあとの受験戦略そのものは高卒認定から大学受験へ|合格する勉強法と時間戦略で詳しく扱っています。
高卒認定はゴールではなく、時間を空けるための手段
ここまで戦術の話を続けてきましたが、最後に一つだけ、視点を引き上げさせてください。
高卒認定は、それ自体がゴールではありません。大学受験資格を先に確保して、残りの時間を自分のために使うための手段です。だから「今回3科目残った」ことに必要以上の意味を持たせなくていい。11月に取れば、結果として空く時間の総量はほとんど変わりません。
私たちCore Learning Communityは、学校に行かないという選択を否定しません。高卒認定で受験資格を確保し、空いた時間を本人がやりたいことに全部使う——という設計を、一人ひとりオーダーメイドで組み立てています。高卒認定は必要な科目に合格した時点で完了するので、通信制高校では実現しにくい時間の自由が手に入ります。
その時間を何に使うかは、向き先次第です。大学進学を軸に据えるなら進学コースで、総合型選抜や一般入試に向けた個別指導を組みます。自分で何かを立ち上げたいなら起業コースで、現役の起業家・ビジネスパーソンが伴走します。私自身は学習戦略の側から、難関大を狙う人の計画設計を担当しています。試験の難易度や独学の可否そのものが気になる人は高卒認定は難しい?合格率と独学の勉強法もあわせてどうぞ。
自己採点の点数を見て、次に何をすればいいかわからない。1人で10週間を管理できる自信がない。——その段階でのご相談も歓迎です。LINEの無料相談から、残っている科目と点数を教えてください。科目ごとの立て直し方を一緒に組みます。サービス紹介、お問い合わせフォーム、よくある質問もご利用いただけます。