そもそも「比べるもの」ではない——役割が違う
私はCore Learning Communityでキャリアメンターを務めながら、普段は経営者として若い人を採用する側にも立っています。その両方の立場で保護者の方の相談を受けていて、いちばん多いのが次の質問です。「うちの子はフリースクールと高卒認定、どちらを選べばいいでしょうか」
結論から書きます。この二つは、並べて選ぶものではありません。担っている役割がまったく違うからです。
フリースクールは、法律上の「学校」ではない民間の施設です。NPO法人が運営するところ、民間企業が運営するところ、個人が小規模にやっているところまで形はさまざまですが、共通しているのは、学校に行きづらくなった子の「居場所」と「日中の過ごし方」をつくる機能を担っている点です。在籍は地元の小中学校に置いたまま通うのが一般的で、学校長の判断によって出席扱いとなるケースもあります(運用は自治体や学校によって差があるため、必ず在籍校に確認してください)。
一方の高卒認定(高等学校卒業程度認定試験)は、文部科学省が実施する国の試験です。合格すれば「高等学校を卒業した人と同程度の学力がある」と認定され、大学・短大・専門学校の受験資格が得られます。こちらは居場所ではなく、資格です。
つまりフリースクールは「今日をどう過ごすか」を、高卒認定は「その先の扉を開けるか」を扱っている。ですから正しい問いは「どちらか」ではなく、「今この子に必要なのは、居場所か、資格か、その両方か」になります。通信制高校やサポート校を含めた選択肢の整理はサポート校とは?通信制高校との違いと学費にまとめています。
費用のリアル——月謝が続くか、一度きりか
保護者の方が最も気にされるのが費用です。ここは金額の大小以前に、費用の「構造」がまったく違います。
フリースクールの費用は、施設によって本当に幅があります。公的な補助や寄付が入っていて低額に抑えられているところもあれば、入会金に加えて月額で数万円程度かかるところもあります。重要なのは金額そのものより、これが通っている間ずっと発生し続ける固定費だという点です。1年通うのか3年通うのかで、総額は何倍にもなります。
対して高卒認定の受験料は、出願する科目数に応じておおむね4,500円〜8,500円(科目数の区分による/最新の金額は文部科学省の実施要項で必ずご確認ください)。受験のたびに一度きりの費用です。もちろん独学が難しければ塾や個別指導の費用が別途かかりますが、それでも高校3年間の学費とは構造が違います。費用の全体像は高卒認定試験 費用・科目・合格率の完全Q&Aで詳しく扱っています。
経営の現場にいる立場で申し上げると、ご家庭が本当に検討すべきなのは月謝の多寡ではありません。「そのお金が、3年後の選択肢を増やす方向に効いているか」です。心身が消耗していて居場所が必要な時期なら、フリースクールの費用は間違いなく必要な投資です。ただ、居場所が安定してきたあとも同じ場所に留まり続けると、費用は積み上がるのに出口が動かない、という状態が起こり得ます。使える支援制度は不登校の子を支える支援制度ガイドで確認できます。
出口の違い——進学と就職で何が変わるか
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
まず冷静に押さえていただきたいこと。フリースクールに通うことで、高校卒業資格や大学受験資格が得られるわけではありません。義務教育段階(小学生・中学生)であれば、フリースクールに通いながら中学校を卒業することはできますが、その先の進路は別途、設計が必要です。
高卒認定に合格すれば、大学・短大・専門学校を受験できます。多くの企業の応募要件や、公務員試験の受験資格でも「高等学校卒業者と同等以上」として扱われます。ただし注意点があります。最終学歴は「中学校卒業」のままです。高卒認定は「高校卒業」そのものではありません。ここを誤解したまま進むと、就職の場面で戸惑うことになります。この点は保護者が知らない高卒認定の真実で正直に整理しました。
採用する側の実感も書いておきます。私が面接で見ているのは、履歴書の一行ではありません。「学校に行かなかった期間に、この人は何をしていたか」です。そこが空白として語られると、どうしても弱い。逆に「学校には行かなかったけれど、この期間にこれを学び、これを作った」と語れる人は強い。高卒認定は、その語りを支える土台になります。
時間の使い方——武器になるか、空白になるか
高卒認定を選んだご家庭が、あとから「これは想定していなかった」と言うものがあります。時間です。
全日制なら週5日の時間割があり、通信制高校でもレポートとスクーリングの締切があります。高卒認定にはそれがありません。合格したその日から、時間割は自分で作るものになる。これは通信制高校でも実現しにくい種類の時間の自由です。
ただ、正直に書きます。この自由は、そのままでは武器になりません。誰も管理しない時間は、そのまま空白にもなり得る。ここで結果が大きく分かれます。
差がつくのは本人の能力ではなく、その時間に大人が伴走しているかどうかだというのが、私の実感です。CLCでは学習面をメンターが週単位で計画し直し、進路や活動の面では現役の起業家・ビジネスパーソンが伴走します。大学進学を見ているなら進学コースで受験設計から、自分で何かを立ち上げたいなら起業コースで小さく始めて回すところまで、一緒に設計します。私たちCore Learning Communityは、学校に行かないという選択そのものを否定しません。
併用という第三の道と、保護者が最初に決めること
ここまで対比で書いてきましたが、実務としていちばん現実的なのは併用です。そして併用には順番があります。
第一に、居場所と生活リズム。心身が消耗している段階で資格や受験の話をしても届きません。フリースクールや支援制度を使いながら、まず日中を安心して過ごせる場所を確保する。ここを飛ばすと、あとの段階がすべて空回りします。
第二に、学習の再開。中学範囲の抜けを埋めるところから始めます。遠回りに見えますが、土台がないまま試験対策に入るほうが、結果的に時間を失います。
第三に、高卒認定。試験は例年8月と11月の年2回で、科目合格制——一度で全科目そろえる必要はありません。一科目ずつ積み上げていけるのは、体調に波がある子にとって大きな利点です。
そのうえで、保護者の方が最初に決めるべきことは、実はフリースクールか高卒認定かではないと思っています。「この子の人生の主導権を、本人に返す」と決めることです。選択肢を並べて説明するのは大人の仕事ですが、選ぶのは本人。日々の関わり方については不登校の子への親の接し方も参考にしてください。
その設計図を一緒に引くのが、私たちの仕事です。まだ何も決まっていない段階で構いません。LINEの無料相談から、お子さんの学年と今の状況だけ書いて送ってください。保護者の方だけのご相談も歓迎しています。全体像はサービス紹介、制度面の疑問はよくある質問やお問い合わせからどうぞ。