「この子は、10年後どうなってしまうんだろう」——お子さんが学校に行かなくなってから、夜中にふとその考えが浮かんで眠れなくなる。保護者の方からいちばん多く聞くのが、この将来への不安です。
Core Learning Community で Career Mentor をしている狩野博司です。ふだんは経営者として自分の事業を回しながら、ビジネスネットワーク団体の運営にも関わり、さまざまな業種の経営者と日常的に顔を合わせています。人を採る側・仕事を頼む側の会話を、この十数年ずっと近くで聞いてきた立場です。
その場所から見ていて確信していることがあります。「不登校だったから将来が閉じる」という因果関係は、少なくとも今の仕事の現場には存在しません。ただし、不安を「不安のまま」放置すると、家庭の判断は確実に鈍ります。この記事では、まず漠然とした不安を分解し、10年後の社会から逆算して、保護者の方が今日から取れる手を整理します。
「将来が不安」の中身を、5つに分解する
不安が重いのは、量が多いからではなく輪郭がないからです。私が保護者面談で最初にお願いするのは、「不安を全部、箇条書きにしてみてください」ということです。書き出してみると、たいてい次の5つに収まります。
①学力が止まってしまうのではないか。②高校卒業の資格が取れないのではないか。③就職できないのではないか。④社会性・人間関係が育たないのではないか。⑤自分(親)が先に死んだあと、この子は生きていけるのか。
ここで大事なのは、この5つがまったく性質の違う問題だということです。①と②は制度と時間で解決できる、いわば技術的な問題です。③は市場の話。④は環境の話。⑤は感情の話であり、正直なところ、いま答えの出る問いではありません。
にもかかわらず、多くのご家庭ではこの5つが一塊になって、夜中に一気に押し寄せてきます。すると「とにかく学校に戻さなければ」という、ひとつの結論に短絡しがちです。実際には、①②は高卒認定試験という制度でかなりの部分が処理でき、③④は10代後半の過ごし方で大きく変わり、⑤は誰にとっても不確実です。分けて置くだけで、手をつけられるものと、いま置いておくべきものが見えてきます。
お子さんへの日々の接し方に迷いがある段階なら、まず不登校の子への親の接し方|焦らず支える視点を先にお読みいただくと、この記事の話が入りやすくなるはずです。
経営者として見てきた、10年後に効く力・効かない力
では、10年後——お子さんが20代半ばになる頃、仕事の現場では何が問われているのか。経営者仲間との会話から、率直なところをお伝えします。
まず、効かなくなっていく力から。決まった手順を速く正確にこなす力は、この10年で相対的に価値を落としました。生成AIと業務ソフトが担う領域が広がり続けているからです。同じ理由で、「知識を多く覚えていること」そのものの希少性も下がりました。かつては学歴がこの二つの代理指標として機能していましたが、代理指標としての精度は落ちています。
逆に、効く力として現場で確実に高値がついているのは、次の3つです。ひとつ目は問いを立てる力。何をやるべきかが決まっていない状態で、課題そのものを言語化できる人は、業種を問わず足りていません。ふたつ目は人と関係を結ぶ力。私が関わるビジネスネットワークの世界は、突き詰めれば「この人になら頼める」という信頼の積み上げで動いています。みっつ目は手を動かして形にする力。小さくても、自分で最後まで作りきった経験があるかどうかは、面接でも取引でもはっきり伝わります。
ここで、多くの保護者の方が意外に感じられるところに触れます。この3つは、学校に通っているかどうかとほとんど相関しません。むしろ、時間割に支配されない10代のほうが、まとまった時間を1つのことに投じられるぶん有利に働くケースがあります。実際に事業を立ち上げた10代の歩みは、10代起業家から学ぶ進路設計|高卒認定からビジネスを始めた若者にまとめています。
もちろん、これは「学校に行かないほうが有利だ」という話ではありません。空いた時間を何に使うかで、有利にも不利にもなるというだけのことです。だからこそ、家庭で扱うべき問いは「いつ学校に戻るか」ではなく、「この1年の時間を何に投じるか」になります。
学歴はいま、どう扱われているのか
とはいえ、③の就職不安には正面から答える必要があります。ここは希望的観測ではなく、制度の事実で押さえましょう。
まず前提として、高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)に合格すれば、大学・短大・専門学校の受験資格が得られます。文部科学省が実施する国の試験で、年2回、8月と11月に行われます。全日制高校に通っていない、あるいは中学卒業のままでも、この一点で進学の扉は開いたままです。不登校でも大学進学できる|現実的な3つのルートに、そこから先の道筋を具体的に書いています。
次に、就職の場面での扱いです。制度上、高卒認定はあくまで「高校卒業と同程度の学力がある」と認定するもので、最終学歴が高卒になるわけではありません。ここは正確に押さえておくべき点です。ただし実務では、その後に大学・専門学校へ進学すれば最終学歴はそちらで上書きされますし、進学しない場合でも、応募資格を「高卒程度」とする求人の多くが高卒認定合格者を対象に含めています。詳しい整理は高卒認定だけで就職できる?最終学歴とキャリアの現実をご覧ください。
そして、私の実感を添えておきます。採用の場で「高校をどう卒業したか」を細かく問う経営者に、私はここ数年ほとんど会っていません。問われるのは、その空白期間に何をしていたかです。「何もしていませんでした」と「この2年、こういうことに時間を使いました」の差は、学校名の差よりずっと大きい。逆に言えば、ここが家庭で仕込める部分ということです。
ただし、業種によって事情は異なります。公務員試験や一部の国家資格、企業によっては応募要件が厳密に定められているケースもあります。お子さんに具体的な志望分野があるなら、その分野の要件だけは早めに調べておくことをおすすめします。
10年後から逆算する——3つのシナリオを紙に書く
ここからが実作業です。不安を減らす最も確実な方法は、未来を1本に絞ることではなく、複数本に増やすことだと考えています。1本しかないから、それが崩れたときが怖い。
紙を1枚用意して、10年後(お子さんが20代半ばの頃)の姿を、3パターン書いてみてください。おすすめの3本立ては次のとおりです。
シナリオA:進学ルート。16〜17歳で高卒認定に合格し、大学や専門学校へ進む。20代半ばで就職、あるいは大学院。シナリオB:事業・専門スキルルート。10代のうちに手に職か小さな事業をつくり、実績を積んで20代で本格化させる。シナリオC:回復優先ルート。まず心身の回復に1〜2年を使い、そのうえでAかBに合流する。
3本書いたら、それぞれに「そのために17歳までにやっておくこと」を1〜2行ずつ足します。すると面白いことに、3本の初期段階はほぼ重なります。Aにも Bにも Cにも、「基礎学力を落とさない」「家の外に人との接点を1つ持つ」「興味の方向を1つ試す」が共通して入ってくるからです。つまり、進路を今すぐ決めなくても、やるべきことは決まる。これが逆算の最大の効用です。
CLCでは、この設計を一人ひとりオーダーメイドで組み立てています。進学を軸に考えるご家庭にはみらい進路研究所(進学コース)で志望校から逆算した学習計画を、事業や自分のスキルで立ちたいお子さんには起業コースで現役の起業家・ビジネスパーソンが伴走する形を用意しています。通信制高校では動かせない「時間の自由」を、そのまま資産として使えるのが、この進路の強みです。
高卒認定を実際に選ぶかどうかの判断材料は、子どもが「高卒認定を取りたい」と言ったらにまとめてあります。制度・費用の全体像は高卒認定の費用と制度Q&A|保護者向け完全ガイドもあわせてどうぞ。
親が今日からできること、やめたほうがいいこと
最後に、家庭での具体的な振る舞いに落とします。
やめたほうがいいこと。ひとつ目は、不安を本人にそのまま渡すこと。「このままだとどうなるか分かってるの」は、情報ではなく圧としてしか届きません。ふたつ目は、他のお子さんと時間軸を比べること。18歳で大学、22歳で就職という時刻表は、あくまで多数派の一例にすぎません。みっつ目は、親が一人で情報を抱えること。夜中に検索を繰り返して不安が増幅していく——これは本当によく聞く話です。調べるほど不安になる情報の集め方は、集め方のほうを変えたほうがいい。
やるとよいこと。まず、家庭の外に、お子さんが「先生でも親でもない大人」と話せる接点を1つ用意すること。私が仕事柄いちばん確信しているのはここです。10代が世界の広さを知るのは、たいてい同世代からではなく、少し先を歩いている大人からです。次に、前章の3シナリオを親自身が先に書いてみること。子どもに見せる必要はありません。親の中に選択肢が3本あるだけで、日常の言葉の温度が変わります。そして、お子さんが何かに時間を使ったら、結果ではなくその事実を言葉にする。「ずっとやってたね」で十分です。
Core Learning Community は、学校に行かない選択を、まず肯定するところから始めます。そのうえで、学習・進路・社会との接点をひとつながりのものとして、中学生・高校生一人ひとりに合わせて設計します。現役の起業家やビジネスパーソンが伴走するので、「将来どうなるか」を親御さんだけで抱えなくてよくなるのが、私たちのいちばんの価値だと思っています。
「この子の将来が不安で、何から手をつければいいか分からない」——その一文で十分です。LINEの無料相談に、学年・いまの状況・いちばん不安なことの3点を書いてお送りください。提供内容はサービス紹介、私たちの考え方はミッション、費用や進め方はよくある質問、個別のご相談はお問い合わせからどうぞ。