「内申点がない」は、実は3つの状態に分かれる
「うちの子は不登校なので、内申点がありません。もう高校は受けられないのでしょうか」——夏休みを過ぎたこの時期、中学3年生の保護者の方から最も多くいただくご相談です。私はキャリア設計と進路相談を担当していますが、この質問には、まず一度立ち止まっていただくようにしています。
というのも、「内申点がない」と言われる状態は、実際には次の3つに分かれるからです。①評定はついているが、欠席が多く数値が低い。②一部の教科に評定がつかず、調査書に斜線や「評価不能」の記載がある。③そもそも在籍校から調査書の見込みを聞けていないので、実態がわからない。
相談の場で確認していくと、いちばん多いのは③です。学校に行けていない期間が長くなるほど、担任の先生と話す機会そのものが減り、事実を確かめないまま最悪の想定だけが家庭の中に積み上がっていきます。これはとても苦しい状態です。
ですから最初の一歩は、担任または進路指導の先生に「現時点の評定と、出席日数の扱い」を確認することです。保護者だけで面談してもかまいませんし、本人が学校に行けない状態でも電話や別室での面談に応じてくれる学校がほとんどです。近年は、体調や別室登校・オンライン学習の状況を評定に反映する運用を取る学校も増えています。ここで得られるのは、不安ではなく事実です。事実がそろえば、打てる手はぐっと具体的になります。中3の進路全体で迷っている段階の方は、不登校の中3、高校進学を悩む親へ。焦らず選ぶ4つの道もあわせてご覧ください。
内申点が効く受験・効きにくい受験——志望先で影響は変わる
次に押さえておきたいのが、「内申点がどこまで結果を左右するか」は志望先によってまったく違う、という点です。ここを一律に考えてしまうと、必要以上に選択肢を狭めてしまいます。
公立高校の一般入試
公立高校では、調査書(内申)と学力検査の点数を一定の比率で合計して判定するのが一般的です。この比率は都道府県ごと、さらに学校・学科ごとに定められており、学力検査の比重を高く設定している選抜もあります。また、多くの自治体が不登校の生徒に対する配慮措置を設けており、欠席日数を選考で不利に扱わない方式や、本人の状況を伝える自己申告書の提出を認める制度が用意されているケースがあります。
ただし、この扱いは自治体によって名称も内容も異なります。「他県ではこうだった」という情報は当てになりません。必ずお住まいの都道府県教育委員会が公開している当該年度の募集要項で確認してください。中学校の進路指導担当の先生に「不登校生徒向けの選抜や配慮の枠はありますか」と直接尋ねるのが、いちばん確実で早い方法です。
私立高校の入試
私立高校は、学力試験と面接を中心に選抜する入試を設けている学校が多く、内申の基準を設けていても専願・併願で条件が異なることがあります。学校説明会や個別相談会で「欠席が多い場合の扱い」を直接質問できるのも私立の利点です。実際、個別相談で事情を伝えたところ、受験自体には支障がないと確認できた——というご家庭は少なくありません。
通信制高校・定時制高校
通信制高校(特に私立の広域通信制)は、書類と面接、作文を中心とした選抜を行う学校が多く、内申点が合否の主要材料にならない場合が一般的です。定時制高校も学力検査と面接を中心とした選抜が多く、不登校を経験した生徒を受け入れてきた実績のある学校が各地にあります。「内申点がないから高校に行けない」という前提は、多くのケースで事実と異なります。
内申点に頼らずに高校へ進む3つのルート
ここまでを踏まえて、内申点の不足を前提にしたまま高校へ進むルートを3つ整理します。どれが良い・悪いではなく、お子さんの体調と意思に合うものを選ぶ、という視点で読んでください。
ルート1|学力検査の比重が高い公立・私立を狙う
学力試験で挽回できる選抜を選ぶ考え方です。この場合、必要なのは学校の授業ではなく入試科目に絞った学習です。不登校の期間に生じた学習の空白は、学年をさかのぼって穴を埋めれば取り戻せます。数学と英語は積み上げ式なので早めに、暗記中心の科目は直前期でも間に合う——というのが、私たちが受験生に伝えている優先順位です。具体的な進め方は不登校で勉強が遅れても大丈夫|取り戻し方と進路にまとめています。
ルート2|通信制・定時制で高校在籍というかたちを確保する
高校生という所属を確保しながら、自分のペースで単位を積む選択です。登校日数の少ないコースを選べば体調に合わせやすく、高校卒業の資格も得られます。一方で、レポート提出とスクーリングは自己管理が前提になるため、「学校に行かなくてよくなった」だけでは続かないという現実もあります。ご家庭のリアルな声は通信制高校 親の本音|後悔と満足のリアルで紹介しています。
ルート3|一度立ち止まり、次の年度から動く
体調が回復していない段階で受験を急ぐと、入学後に再び通えなくなることがあります。回復を最優先し、進路の判断を数か月先に置くという選択も、決して後退ではありません。中学卒業後すぐに高校へ入らなくても、後から通信制高校に入学することも、次に述べる高卒認定を経て大学を目指すこともできます。利用できる支援制度は不登校の子を支える支援制度ガイド|保護者ができることで整理しました。
高校進学だけが答えではない——高卒認定という4つ目の道
そして、内申点という物差しの外側にある選択肢が、高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)です。文部科学省が実施する国の試験で、合格すれば大学・短大・専門学校の受験資格が得られます。選抜ではなく合格基準を満たせば通る試験なので、内申点も出席日数も一切関係ありません。年2回、科目ごとに受験でき、合格した科目は次回以降に持ち越せます。
受験できるのは、その年度の終わりまでに満16歳以上になる方です。したがって中学3年生の年度中には受験できませんが、中学卒業の翌年度——高校1年生にあたる年齢から受験できます。実際に、中学卒業後すぐ高校に入らず、翌年度に高卒認定を取得して大学受験に進む生徒がいます。制度の詳細と保護者の方が抱きやすい誤解は、高卒認定の真実|保護者が知るべきメリットと誤解で解説しています。
保護者の方が心配されるのは「高卒認定は高校卒業と同じ扱いになるのか」という点です。最終学歴としては中学卒業のままですが、大学・短大・専門学校の受験資格は得られ、多くの国家資格の受験要件や就職の応募条件でも高校卒業と同等に扱われるケースが一般的です。ただし企業や資格によって扱いが異なる場合があるため、進みたい方向が具体的にある場合は個別に確認しておくと安心です。3つの進路の位置づけの違いは全日制・通信制・高卒認定の違い|3つの進路を徹底比較をご覧ください。
私たちがこの選択肢を大切にしているのは、資格そのものより空いた時間の使い道にあります。通信制高校でもレポートとスクーリングには時間が必要ですが、高卒認定は必要な科目に合格した時点で終わります。そこから先の一日をどう使うか——大学受験の準備に振り向けるのか、語学や留学の準備に充てるのか、事業づくりに挑戦するのか。この通信制高校では実現しにくい時間の自由こそが、高卒認定という道の本質だと考えています。
願書提出までに親ができる4つの準備
最後に、これから出願期までの数か月で保護者の方にしていただきたいことを4つに絞ってお伝えします。
①事実を集める。担任との面談で現時点の評定と出席の扱いを確認し、教育委員会の募集要項で配慮措置の有無を調べる。これだけで、家庭内の不安の総量は目に見えて減ります。
②選択肢を「並べて」見せる。公立・私立・通信制・定時制・高卒認定を、一枚の紙に横並びで書き出してください。順位をつけずに並べるのがポイントです。子どもが追い詰められるのは、選択肢が一本しかないと感じているときです。並べるだけで、本人の表情が変わることがあります。中学生本人が読める記事としては中3で「高校に行きたくない」君へ|進路5つの選択肢をおすすめしています。
③期限を確認し、決定はぎりぎりまで急がない。出願の締切、私立の個別相談会、通信制の出願時期——日付だけ先に押さえておけば、いつまでに決めればよいかが見えます。締切さえ把握していれば、それまでは考え続けてよいのです。
④体調と生活リズムを、学習より優先する。朝起きられない、頭痛や腹痛が続くといった症状の背景に、起立性調節障害などの体調要因があるケースもあります。気になる場合は自己判断せず、医療機関にご相談ください。学習の再開は、体調が整ってからで十分間に合います。
私たちCore Learning Communityは、一人ひとりの状況に合わせたオーダーメイドの進路設計を、学習メンターと現役の起業家・ビジネスパーソンがチームで支えています。学校に行かないという選択を否定しないこと、そのうえでどの道にも準備が要ることを一緒に確認していくのが、私たちの関わり方です。背景にある考え方は私たちのミッションを、大学進学を視野に入れている場合は進学コースをご覧ください。
「内申点がないまま、この先どうすればいいのか」——その段階でのご相談を歓迎しています。最初の面談が保護者のみというケースも少なくありません。LINEの無料相談から、まずは今の状況をお聞かせください。お問い合わせフォームやよくある質問もご活用いただけます。